『天気の子』聖地巡礼スポット12選|東京の舞台を徹底解説

『天気の子』は、2019年に公開された新海誠監督の青春ファンタジー。天候を操る少女と東京に家出してきた少年の出会いを通して、“祈り”と“選択”の物語が描かれます。日本での興行収入は142.3億円に達し、日本映画歴代16位を記録。第43回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞と最優秀音楽賞を受賞するなど、映像・音楽の両面で高く評価されました。

本記事では、新宿・代々木・高円寺・お台場など、映画に登場する主要スポット12選を紹介します。スクリーンで見た雨の街や晴れ渡る空を実際に歩けば、帆高と陽菜の物語を追体験できるはず。東京の風景に息づく“天気の子”の世界を、ぜひ現地で感じてみてください。

『天気の子』とは?あらすじと見どころ

『天気の子』は、『君の名は。』に続く新海誠監督の長編アニメーション映画で、2019年に公開されました。高校生の帆高が家出して上京し、天候を操る不思議な力を持つ少女・陽菜と出会うことで、ふたりの運命が大きく動き出します。雨が降り続く東京を舞台に、居場所を求めて生きる若者たちの葛藤と絆が描かれ、ファンタジーでありながら現実社会の息づかいを感じさせる物語として幅広い層に共感を呼びました。

見どころは、気象現象をモチーフにした“祈り”と“選択”のテーマ、そしてRADWIMPSによる音楽と新海監督ならではの圧倒的な映像美の融合です。雨粒や雲の流れ、ビルのガラスに反射する光まで緻密に描かれた映像表現は、東京という都市の躍動と孤独を同時に映し出します。登場人物それぞれの心の揺れや成長が丁寧に描かれ、観る者の心を強く揺さぶる本作は、公開から数年を経た今もなお多くのファンに愛され続ける名作です。

【『天気の子』の聖地 新宿・代々木編】都会で始まる物語の原点

代々木会館

代々木会館は、『天気の子』で陽菜が“天気の巫女”として覚醒する象徴的なシーン、そして帆高が陽菜を救おうとするクライマックスの舞台となった場所です。屋上に鳥居が立つ廃ビルとして登場し、二人の運命をつなぐ物語の核心を象徴しています。実在の代々木会館はJR代々木駅西口近くにあり、“代々木の九龍城”とも呼ばれた独特の外観が印象的でしたが、老朽化により2020年に解体。現在は「プレンジ代々木」として再開発されています。建物は姿を消しても、作品の記憶とともに語り継がれる聖地です。

画像出典:Wikimedia Commons(撮影:Rs1421)/ライセンス:CC BY-SA 3.0

住所:東京都渋谷区代々木1丁目35-1
アクセス:JR山手線「代々木駅」A2出口から徒歩1分
営業時間:なし(建物解体済のため見学不可)

アタミビル

アタミビルは、『天気の子』で帆高が東京に来て仕事も見つからず途方に暮れる中、野良猫のアメと出会う場面の舞台となった場所です。のちに陽菜を救うきっかけとなる拳銃を拾うシーンや、スカウトマンに連れ去られそうになる陽菜を助ける場面でも登場します。実際のアタミビルは新宿・歌舞伎町の一角に建つ雑居ビルで、飲食店やバー、スナックなどが軒を連ねています。ネオンが灯る夜の街並みは劇中そのままの雰囲気を漂わせ、物語の緊張感と都会のリアリティを際立たせる聖地です。

住所:東京都新宿区歌舞伎町2丁目27-8
アクセス:西武新宿線「西武新宿駅」から徒歩3分
営業時間:各テナントの営業時間に準ずる(建物自体に定休日なし)

マクドナルド西武新宿駅前店

マクドナルド西武新宿駅前店は、『天気の子』で陽菜がアルバイトをしていた場所、そして帆高と初めて出会う印象的なシーンの舞台となった聖地です。劇中では、家出して行き場のない帆高に、陽菜が「あげる。内緒ね」とビッグマックを差し出す温かな場面が描かれました。店の外観は実際の店舗を忠実に再現しており、作中の雰囲気そのまま。多くのファンが訪れ、記念にビッグマックを注文する聖地巡礼の定番スポットとしても知られています。

住所:東京都新宿区歌舞伎町1丁目24-1
アクセス:西武新宿線「西武新宿駅」から徒歩1分(駅前)
営業時間:7:00〜24:00(年中無休)

【『天気の子』の聖地 都心編】光と祈りが交差する転機の場所

朝日稲荷神社

朝日稲荷神社は、『天気の子』で陽菜が“晴れ女”の力を授かる屋上神社のモデルとされる場所です。劇中では建物自体が代々木会館として描かれましたが、屋上部分のモチーフは銀座にある「大広朝日ビル」屋上の神社といわれています。創建年代は不詳ですが、安政大地震で社殿が倒壊したのち、関東大震災の際に堀底から神璽が現れたことで再建されたと伝えられています。商売繁盛や厄除けにご利益があり、毎年2月の「二の午祭」には多くの参拝者が訪れる銀座の天空神社です。

画像出典:Wikimedia Commons(撮影:Kanesue)/ライセンス:CC BY 2.0

住所:東京都中央区銀座3丁目8-12 大広朝日ビル屋上
アクセス:都営浅草線・東京メトロ日比谷線「東銀座駅」A8出口から徒歩1分
営業時間:7:30〜18:00(無休)

田端駅南口

田端駅南口は、『天気の子』で陽菜の自宅近くとして登場する聖地です。帆高が陽菜を訪ねる場面や、思いを告白しようとするシーン、そして雨の中で二人が再会を果たすラストまで、物語の節目ごとに登場します。駅を出てすぐの坂道には、新幹線の高架や「あみ印食品工業」の看板など、劇中の風景が忠実に再現。山手線唯一の無人改札が残るこの小さな駅は、都会の喧騒から少し離れた穏やかな空気をまとい、雨に濡れた路面や線路沿いの景色が、作品の余韻を静かに思い起こさせます。

画像出典:Wikimedia Commons(撮影:Kanesue)/ライセンス:CC BY 2.0

住所:東京都北区東田端1丁目17-1
アクセス:JR山手線・京浜東北線「田端駅」南口直結
営業時間:4:30〜0:30(無休)

のぞき坂

のぞき坂は、『天気の子』で“晴れ女”のサービスで仕事を増やしていった陽菜が天候を操る力を発揮し、空が一気に晴れ渡るシーンで登場します。坂の上から見下ろす光景は劇中そのままで、遠くまで続く道と広がる空が印象的です。目白通りからおよそ15メートル下る急勾配は都内でも屈指の傾斜を誇ります。坂の上から見下ろすとまるで崖のような迫力があり、「思わず下をのぞき込んでしまうほどの坂」という由来から名付けられたといわれています。

画像出典:Wikimedia Commons(撮影:Taka M)/ライセンス:CC BY-SA 3.0

住所:東京都豊島区高田2丁目12-21
アクセス:東京メトロ副都心線「雑司が谷駅」3番出口から徒歩1分
営業時間:24時間開放(無休)

六本木ヒルズ屋上スカイデッキ

六本木ヒルズ屋上スカイデッキは、『天気の子』で“晴れ女”として依頼を受けた陽菜が、神宮外苑花火大会を晴れさせるために祈るシーンの舞台となった場所です。花火と夜空が重なり合う幻想的な映像が印象的で、東京の街並みを包む光と風が物語を象徴しています。実際のスカイデッキは地上270メートルの屋外展望台として人気でしたが、2023年9月をもって無期限休業となり、そのまま一般営業を終了。現在は屋内展望台「東京シティビュー」から、陽菜が見上げたような空を望むことができます。

画像出典:Wikimedia Commons(撮影:funk bass)/ライセンス:CC BY 3.0

住所:東京都港区六本木6丁目10-1 森タワー屋上
アクセス:東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口から徒歩2分
営業時間:11:00〜20:00(最終入場19:30、無休)

芝公園

芝公園は、『天気の子』で“晴れ女”のサービスの最後の依頼で、須賀と娘の萌花が芝生で遊ぶシーンの舞台とされる場所です。東京タワーを背景に、夏美と須賀が伯父と姪の関係であることが明かされ、さらに夏美が陽菜に“天気の巫女”の運命を語るなど、物語の重要な転機を迎える場面として描かれました。実在する芝公園は明治6年に開園した日本最古級の公園の一つで、都心にありながら緑豊かな芝生が広がり、東京タワーを望む絶好のロケーションが魅力です。

画像出典:Wikimedia Commons(撮影:Dick Thomas Johnson)/ライセンス:CC BY 2.0

住所:東京都港区芝公園1〜4丁目
アクセス:都営三田線「芝公園駅」から徒歩2分
営業時間:常時開園(無休)

【『天気の子』の聖地 高円寺編】“天気”を司る神社をたずねて

高円寺氷川神社(気象神社)

高円寺氷川神社は、『天気の子』で圭介と夏美が“100%の晴れ女”に関する情報を取材するシーンの舞台として登場します。境内には、日本で唯一「気象の神様」を祀る気象神社があり、晴れ・雨・風・雷など八つの気象を司るといわれています。御祭神は知恵の神・八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)。天照大神を岩戸から導き出したとされ、その功績から天候を司る神として信仰されています。境内に奉納される赤と黄の下駄型絵馬は、かつて人々が天気を占うために下駄を飛ばした風習に由来するものです。

画像出典:Wikimedia Commons(撮影:Wei-Te Wong)/ライセンス:CC BY 2.0

住所:東京都杉並区高円寺南4丁目44-19
アクセス:JR中央線「高円寺駅」南口から徒歩1分
営業時間:早朝〜17:00(無休、4〜9月は〜17:30)

【『天気の子』の聖地 離島・湾岸編】“空の上”へと続く旅の風景

竹芝客船ターミナル(さるびあ丸)

竹芝客船ターミナルは、『天気の子』で離島から家出してきた帆高が東京に到着し、須賀に名刺を渡されるシーンの舞台モデルとなった場所です。東京湾に面したこのターミナルは、伊豆諸島と東京を結ぶ定期航路の拠点で、作中で帆高が乗っていたフェリー「さるびあ丸」も実在します。さるびあ丸の船内には、須賀にチキン南蛮定食とビールを奢られる食堂や、帆高が風にあおられる甲板など、映画を思わせる場所が点在。物語の始まりを告げるような旅立ちの空気が今も漂っています。

画像出典:写真AC

住所:東京都港区海岸1丁目16-1
アクセス:ゆりかもめ「竹芝駅」から徒歩すぐ
営業時間:7:00〜22:00(無休)

お台場海浜公園 展望デッキ

画像出典:写真AC

住所:東京都港区台場1丁目4
アクセス:ゆりかもめ「お台場海浜公園駅」から徒歩3分
営業時間:24時間入園自由(無休)

神津島

神津島は、『天気の子』で帆高の故郷として描かれた離島のモデルとされています。東京から南へ約180km、伊豆諸島の中央に位置する小さな島で、透き通る海と穏やかな時間が流れます。帆高は保護観察処分を受けて戻ってきたこの島で、過去と向き合いながら再び東京へ向かう決意を固めます。神津島には「東京都立神津高等学校」や「はるか展望台」など、作品を想起させる風景が実在します。古くは神々が集ったという伝承から名づけられた“神の島”とも呼ばれ、どこか神秘的な気配を感じさせる聖地です。

住所:東京都神津島村
アクセス:東京竹芝桟橋から高速船で約3時間45分(大型客船で約12時間)、または調布飛行場から航空機で約45分
営業時間:— (島全体のため制限なし)

『天気の子』おすすめ聖地巡礼ルート

『天気の子』の聖地巡礼は、JR代々木駅から始まります。まずは、陽菜が“天気の巫女”として覚醒する象徴的な舞台、代々木会館跡地(現・プレンジ代々木)へ。再開発により姿を変えた今も、代々木駅西口から見える街並みには物語の余韻が残ります。

続いて新宿・歌舞伎町のアタミビルへ。帆高が拳銃を拾い、陽菜を助けるきっかけとなった場所です。飲食店やスナックが入る雑居ビルのネオンは、東京の光と影を象徴するよう。近くのマクドナルド西武新宿駅前店は、帆高が陽菜に出会うシーンの舞台。ビッグマックを片手に、あの瞬間を追体験してみてはいかがでしょうか。

次に向かうのは銀座の朝日稲荷神社(大広朝日ビル屋上)。屋上に小さな鳥居と祠が並ぶ静かな空間で、陽菜が“晴れ女”の力を授かった神社のモデルとされています。高層ビル群に囲まれながらも、不思議な清らかさが漂います。

北区の田端駅南口は、陽菜の自宅近くとして登場した場所。帆高が思いを告白しようとする場面や、雨の中で再会するラストでも描かれた重要な舞台です。坂道や「あみ印食品工業」の看板など、劇中の背景がそのまま残ります。

都心へ戻り、六本木ヒルズ屋上スカイデッキ(港区六本木6丁目)へ。神宮外苑花火大会を晴れさせる祈りのシーンのモデルで、花火と夜空が重なり合う映像美が印象的でした。現在は一般営業を終了していますが、屋内展望台から望む東京の景色は、陽菜の祈りを思い起こさせます。

芝公園では、須賀と娘の萌花が遊ぶ芝生や、夏美が陽菜に“天気の巫女”の運命を語る場面が印象的に描かれました。東京タワーを望む穏やかな空間が、物語の余韻を静かに包み込みます。

旅の締めくくりは竹芝客船ターミナル。帆高が離島から上京し、須賀と出会うシーンのモデルです。実際に伊豆諸島と東京を結ぶフェリー「さるびあ丸」が発着し、夜はレインボーブリッジの灯りが海面を照らします。

代々木から竹芝へ——。一日で“空”と“祈り”をめぐるこのルートは、東京という現実の中に、物語の息づく景色を見つけられる聖地巡礼コースです。

『天気の子』須賀の事務所の舞台は?

帆高が東京で最初に身を寄せる編集プロダクション「K&Aプランニング」。須賀が経営する小さな編集プロダクションで、オカルト雑誌『ムー』などに記事を寄稿するのが主な仕事です。スタッフは須賀と姪の夏美、そして居候の帆高の3人。取材や原稿執筆に追われながらも、家庭のような温かさが漂う空間で、帆高は社会の現実に触れ、少しずつ大人への一歩を踏み出していきます。ちなみに、社名の「K&Aプランニング」は、須賀夫婦・圭介と亡き妻・明日花(あすか)の頭文字に由来しています。

モデルとされる建物は、東京メトロ神楽坂駅から徒歩約3分の赤城坂沿いにあります。半地下へ続く階段の入口やタイル張りの外壁、外を走る配管などが、映画の設定資料と驚くほど一致しています。事務所のあった地下1階には、かつてコーヒーショップやオーダーメイドのアパレルショップが入っていました。現在はいずれも閉店していますが、建物には当時の面影が残っています。

周辺は古き良き街並みとモダンな店舗が共存する神楽坂エリア。近くには創建700年以上の赤城神社もあり、坂道を歩けば作品の情景が自然と重なります。須賀の事務所は、編集者としての現実や家族のような絆、都会に生きる孤独を象徴する“もうひとつの聖地”です。なお、周辺は住宅街のため、聖地巡礼の際は近隣への配慮を忘れずに。

まとめ

『天気の子』の聖地巡礼は、東京という現実の街を舞台に、登場人物たちの想いを追体験できる特別な旅です。代々木や新宿の雑踏、銀座や六本木の高層ビル群、そして芝公園や竹芝の海辺——それぞれの場所には、帆高と陽菜の“祈り”が今も静かに息づいています。実際に歩けば、スクリーン越しでは感じきれなかった風や光、空の広がりが、物語の記憶と重なり合うことでしょう。アニメを通して描かれた“天気”と“選択”の物語を、自分の足でたどることで、あの夏の日の感動が再びよみがえります。『天気の子』の舞台を訪ね、現実の東京で作品世界の余韻を感じてみませんか。