閉校を前に実現した“初の校舎公開”が示した意義
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の舞台として知られる兵庫県立西宮北高校が11月23日、ファンと地域住民を対象に初めて校舎を一般開放した。近隣校との統合により2027年3月末で校名が消失することを受けた企画であり、西宮北高校同窓会、KADOKAWA、SOS団の協力を得て実現した。参加は事前申込制で定員1000人が設けられ、募集開始から半日余りで満枠となった。

同校は、原作者で卒業生の谷川流の経験を基にした「県立北高校」のモデルとして知られる。2003年に小説シリーズが始まり、2006年に京都アニメーション制作でアニメ化されて以降、国内外から多くのファンが「聖地巡礼」で訪れてきたが、校舎内を公開するのは今回が初の試みであった。
現在、西宮北高校は西宮甲山高校との統合に伴い2025年4月から県立西宮苦楽園高校として再編されているが、「西宮北高校」の校名は2027年の閉校まで継続して使用されている。今回の一般開放では、西宮北高生と西宮苦楽園高生約30人が案内役として参加し、来場者を誘導した。
AR演出や部室再現など生徒企画が来場者を魅了
当日は本館・中館・体育館の一部が公開され、校舎外観や「ハルヒ坂」と呼ばれる急坂など、作品に登場するスポットでの撮影が許可された。校内では、生徒が制作したAR(拡張現実)企画が展開され、設置されたQRコードを読み取るとアニメのシーン画像が実際の風景と重なって表示された。また、アニメに登場する部室を再現した展示も用意され、撮影を楽しむ来場者の姿が見られた。
現地を訪れたファンの熱気がSNSで広がる反響
SNSにも来場者の投稿が相次ぎ、「通っていないのに見覚えのある景色ばかりだった」「東京から来たが満足度の高いイベントだった」「『涼宮ハルヒの憂鬱』に出会って良かったと思えた」といった声が寄せられた。また、「夢のような2時間だった」といった感想も投稿され、作品の舞台を訪れた喜びが広がっていた。
本企画は、校名が姿を消す前に学校と作品のつながりをあらためて共有する機会となった。教室や校舎を訪れたファンの姿は、作品が長く支持されてきた背景を示しており、西宮北高校が担ってきた文化的な役割の大きさを映し出していた。節目のタイミングで実現した今回の開放は、多くの参加者にとって記憶に残る一日となった。
