株式会社ブシロードのグループ分析組織・アニメデータインサイトラボは、2025年秋クールのアニメ68作品を対象に、Google検索量(トレンドスコア)とX投稿量(ファンスコア)の両面から注目度の推移を検証した「2025年秋アニメ初速の注目度分析レポート」を公開した。放送開始から3週間のデータをもとに、初速や後伸び傾向を比較したところ、最も顕著な伸びを示したのは『野原ひろし 昼メシの流儀』だった。トレンドスコアが初週比450%という驚異的な成長率を記録し、SNS上で“昼メシ旋風”を巻き起こしている。

レポートによると、初週時点では『キングダム 第6シリーズ』や『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』といった大型続編がトレンドスコア、ファンスコアで上位を独占していた。しかし3週目には『野原ひろし 昼メシの流儀』が検索トレンドで5位、ファンスコアで2位に急上昇。初動では目立たなかった作品が口コミを起点に一気に浮上する“後伸び型”の典型例となった。SNS上では「ひろしの飯テロがヤバい」「大人になって見ると刺さる」といった投稿が広がり、30代以上の層を中心に共感を集めているという。

分析では、この成長の背景に「ニコニコ動画発X行き」と呼ばれるバズ経路があると指摘。考察やMAD動画を通じて拡散するこのルートは、30代以降の男性層を中心に機能しており、『野原ひろし』のOP映像が“ネタ映像”として二次創作されやすかったことが火種となった。特に、主人公が昼食前に“領域展開”のような演出を見せるOPシーンは放送直後から話題となり、YouTubeやX上で繰り返し引用されたという。
一方、10〜20代女性を中心とした「TikTok発YouTube行き」の拡散パターンも依然として強力だ。『えぶりでいホスト』や『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』のように、特定シーンや楽曲の切り抜き動画がTikTokで話題化し、一気見視聴を誘発するケースが相次いでいる。こうした二極化するバズ構造は、ターゲット層ごとに異なるプロモーション設計が求められることを示している。
レポートでは、今後のアニメプロモーションにおいて重要となる指針として、「ターゲット層に応じたバズ経路の設計」「見たいシーンを起点とした拡散戦略」「一気見視聴を促す配信・編集設計」の3点を挙げている。特に『野原ひろし 昼メシの流儀』のように、SNSで話題化しやすい映像や構成を意図的に設計することが、長期的な人気獲得の鍵になるという。従来の“初速競争”だけでなく、放送後に拡散し続ける“後伸び戦略”が、今後のアニメヒットの新常識となりつつある。
