アニメ『Go!プリンセスプリキュア』の天ノ川きらら/キュアトゥインクル役などで知られる声優・山村響が、自身の声が生成AIによって無断使用されていたことをX(旧Twitter)で明らかにした。山村は「悔しいし、悲しいし、複雑な気持ちになってしまいました」と心境を吐露し、AI技術のあり方について改めて考える必要があると訴えている。
山村は9月5日の投稿で、自分の声が生成AIナレーションに無断で使われている動画を発見したと報告。「どこをどう聞いても自分の声。だけど明らかに自分ではない、読んだこともない文章を自分の声が読んでいる」と記し、該当動画については事務所を通じて対応を進めているとした。さらに「ネット上などで手軽に聞ける音声を元に無断でAIに学習させ、それを無料で提供しているサービスが明らかに存在している」と現状を指摘し、利用者が無自覚に無断使用の音声を使ってしまう可能性に警鐘を鳴らした。
「もし使用する立場になったとしても、それがきちんと正しいルートで使用できるようになっているものなのか、しっかり見極めて使わないといけないなと感じました」と山村は強調し、「悲しいな。AIを悪用するんじゃなくて、正しい方法でみんなが幸せになれるように使うことは出来ないのかな」と呼びかけた。
翌6日の投稿では、問題提起が大きな反響を呼んでいることに触れつつ、「生成AIについて、ものづくりやエンターテインメントに関わる方々、そしてそれを受け取って下さる皆さまそれぞれが、いま一度考えを巡らせるきっかけの一つとなればと思います」とコメント。単なる被害報告にとどまらず、業界全体や社会に向けた問いかけとして発信した姿勢が注目されている。
近年、AI音声合成の分野では声優やナレーターの音声を無断利用したとみられる事例が相次いでいる。無料で手軽に使えるツールが普及する一方で、著作権や人格権、さらには不正競争防止法との関係が議論を呼んでおり、法整備や業界のルールづくりが急務となっている。今回の山村の発信は、エンターテインメント業界だけでなく、AI時代における表現と権利のあり方を考える契機となりそうだ。
