マンガアプリへの連載移籍発表の裏で広がった、壱原ちぐさ氏の不安と違和感
アニメ化が期待される新鋭作として注目を集めていた、能楽を題材にした漫画『シテの花 ―能楽師・葉賀琥太朗の咲き方―』に思わぬ動きがあった。11月19日発売の『週刊少年サンデー』51号で、連載がマンガアプリ「サンデーうぇぶり」へ移籍することが正式に発表された。誌面では壱原ちぐさ氏が、宝生流家元・宝生和英の監修のもと綿密な取材を重ねて制作してきたこと、そして制作体制を円滑にするためWebへ移行する判断に至ったと説明している。しかし、この移籍発表に先立ち、壱原氏が編集部との行き違いや連載方針をめぐるトラブルをX上で公表し、アニメファンの間でも波紋が広がっている。

後方掲載、無断修正も――前担当編集とのやり取りで見えてきた問題
壱原氏が最初に問題提起したのは17日21時。読者アンケートでは平均7位と支持を得ているにもかかわらず掲載順が後方に下げられていた理由として、前担当編集者の「入稿遅れ」を指摘した。「私が締切3日前くらいに提出している原稿を前担当編集さんは締切翌日とかに入稿していて」と明かし、その誤解が掲載順やカラー扉の扱いに影響した可能性に言及した。「応援の声が反映されない」とする悔しさが投稿に滲んだ。
とても悲しい事実を知ったのですが…
『シテの花』サンデー読者アンケートでは平均7位と大変厚く応援いただいているのにどうして掲載順がいつも後半なんだろうと思っていたら、
私が締切3日前くらいに提出している原稿を前担当編集さんは締切翌日とかに入稿していて、…— 壱原ちぐさ🌱シテの花 (@ichichigu) November 17, 2025
投稿が広がる中、18日0時には壱原氏が補足説明を行った。掲載順はアンケートだけで決まるわけではなく、売上やジャンルバランスなど複数の要素で調整されると理解したうえで、それでも「アンケ順位との乖離が激しかった」と述べた。入稿遅れについては写植確認の催促を何度も行った経験があり、セリフの無断変更が起きたこともあったという。新担当編集者が理由を尋ねたところ「忘れていた」という回答があったといい、壱原氏は当時の困惑を率直に綴った。ただし前担当編集者は二人であり、特定につながる情報は明かさないよう呼びかけた。
既に通知欄が機能しなくなり反応し切れないのですが、応援の声をたくさんいただきありがとうございます…!
思った以上に広がってしまったので、少し丁寧に補足させていただきますまず掲載順やカラーはアンケートだけで決まるものでも、信用度だけで決まるものでもありません…
— 壱原ちぐさ🌱シテの花 (@ichichigu) November 17, 2025
編集部の説明で浮かび上がった長期的なコミュニケーション不全
18日18時には、編集長を交えた話し合いの結果を報告した。壱原氏によれば、初日の投稿では「入稿」と「校了」を混同していたとし、実際に遅延が発生していたのは校了作業であり、締切に間に合わなかったのは一度だけだったと説明を受けた。また掲載順に関する認識は担当者の推測が含まれていたことも共有され、壱原氏は不安を広めた点を謝罪した。一方で、前担当編集者とのあいだで業務不備やコミュニケーション不全が長期的に積み重なっていたことは編集部と共通認識を得られたとし、「打ち合わせが成立しない状況や心身の支障が何度もあった」と問題の深さに触れた。編集部は現在、前担当者に関する調査を進めているという。
現在、編集長や新旧の担当編集さんたちと話し合いを重ねております
こちらのポストは編集長にもご確認いただいた上で行っていますまず、昨日のポストは事前に嘘がない内容であると確認を得てから致しました
しかし、…
— 壱原ちぐさ🌱シテの花 (@ichichigu) November 18, 2025
壱原氏は現在、新担当編集者のもと作品制作に取り組んでおり、「面白い作品を描くことが最大の誠意です」と前向きな姿勢を示している。能楽を題材にした稀有な青春漫画として評価されてきた『シテの花』は、11月18日に単行本4巻が発売されたばかりで、Web移籍後の展開にも注目が集まる。
少年サンデー『シテの花 ー能楽師・葉賀琥太朗の咲き方ー』 :https://websunday.net/work/66267/
