パキスタン初の手描き長編アニメーション映画『The Glassworker(ザ・グラスワーカー)』が、日本語吹替版の制作と全国公開を目指し、クラウドファンディングを開始した。プロジェクトを手がけるのは、ウクライナ映画『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』の日本配給を成功させた映画配給会社 Elles Films(エルフィルムズ)。支援募集はモーションギャラリーで2025年10月末まで実施されている。

本作は、戦時下の社会を舞台に、若きガラス職人ヴィンセントと、軍人の父を持つヴァイオリニストの少女アリズの出会いを描く。平穏な日々の中で芽生えたふたりの絆は、戦争や階級、親の価値観に翻弄されながらも、「愛すること」「信じること」「表現すること」を諦めずに生きようとする姿を追う。手描きによる温かく繊細な映像美、ガラス細工や音楽をモチーフにしたストーリーが特徴で、スタジオジブリ作品から強い影響を受けて制作されたという。
監督を務めるウスマン・リアス氏は、TEDフェローとしても知られる音楽家でありギタリスト。9.11以降の混乱の中で育ったリアス氏は「『ものを破壊する戦争の惨さと芸術の尊さ』を、戦争を経験していない世代にもアニメーションを通して伝えたい」と語り、2015年にパキスタン初のアニメスタジオ「Mano Animation Studios」を設立。10年以上をかけて完成した本作は、「アヌシー国際アニメーション映画祭」でワールドプレミア上映され、アカデミー賞パキスタン代表作品にも選ばれた。また、広島県広島市で開催された「ひろしまアニメーションシーズン2024」にて、『ガラス職人』のタイトルで公開された。
日本での吹替版制作を主導するElles Filmsの代表・粉川なつみ氏は、「映画には“関心を行動へと変える力”がある」と語る。前作『ストールンプリンセス』ではクラウドファンディングで約1,000万円を集め、全国70館で公開を実現した。今回も、戦争や平和を考えるきっかけを届ける作品として挑戦を続けるという。上映による利益の一部は国境なき医師団に寄付される予定だ。
本プロジェクトは目標金額の達成に関わらず実施される「All-in方式」で、資金は吹替制作費や宣伝費に充てられる。支援者にはオンライン試写会招待やエンドロールへの名前掲載などの特典が用意されており、2026年の全国公開を目指している。
27日21時現在、179人からおよそ324万円の支援を集めている。残り5日間。クラウドファンディングの詳細は、モーションギャラリー内のプロジェクトページで確認できる。
MotionGallery「パキスタン初手描き長編アニメ『The Glassworker』(英題)日本語吹替版制作と全国公開を目指すプロジェクト!」:https://motion-gallery.net/projects/theglassworker
